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日本企業が頭を悩ませる、ミドル・シニア人材の問題をどう解決するか?【人材育成のタネ,vol1】

2022.12.13

  • 人材育成のタネ
  • 竹本塾・竹本図書館

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Q.なぜ今、ミドル・シニア人材の活用?

なぜ今、ミドル・シニア人材の活用が求められているのでしょうか。まずは、背景から見ていきます。現在のミドル・シニア人材は、バブル世代、団塊ジュニア世代にあたり、社内の年齢構成では大きな割合を占めています。雇用においては、バブル・団塊ジュニア世代が2020年頃に賃金カーブのピークに達することから、人件費が増大することが懸念されています。

 

 

 

①成果と給与のミスマッチ

従来の評価制度は、年齢を基準に給与が上がり、昇進する「年功序列」が一般的でした。しかし、ポスト(役職)には限りがあり、全員が等しく昇進できるわけではありません。
そのため、40代を境に

  • 出世
  • 名ばかり管理職
  • 出世滞留

という、目に見えない三つの道にキャリアが分かれることになります。ここで出世コースに乗ることができたとしても、決まった年齢で役職を退任しなくてはならない「役職定年制度(ポストオフ)」が導入されている場合、50代で役職を解かれる可能性もあります。

このように、昇進できない、もしくは、昇進できても役職定年を迎えた社員は、出世の道が絶たれたことや処遇への不満、部下との立場の逆転などから、仕事へのモチベーションが低下しがちです。その結果、成果が伴わなくても高い給与を支払っているという「成果と給与のミスマッチ」が起きています。

 

 

 

②65歳までの定年引き上げ

高年齢者雇用安定法の改正により、2025年4月からすべての企業において「65歳に定年を引き上げ」「65歳までの継続雇用(希望者のみ)」「定年制の廃止」のいずれかの導入が義務付けられます。

また、2021年4月からは70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となりました。

これまで60歳だった定年が65歳、または70歳になることで、新規採用を抑制せざるをえなくなる、組織の新陳代謝が滞るといった影響が生じる恐れがあります。

 

 

 

ミドル・シニア人材の活躍をキャリア自律で促す

ここまでミドル・シニア人材の活用が必要である理由や背景を述べてきましたが、現状はどのようになっているのでしょうか。
企業を対象に行った調査によると、ミドル・シニア人材を活用した企業は「高い専門性の発揮」「取引先や人脈の伝承」「後進の育成」など、経験や専門性を活かした業務では、一定の成果が出ていると評価しています。
一方で、「自律的な自身のキャリア構築」や「新たな仕事に対するチャレンジ」では、”組織の期待に十分に応えている”と活躍を評価している企業は2割未満に留まりました。

そこでミドル・シニア人材の良い点を活かしつつ、活躍を後押しできるようにするのが「キャリア自律」です。

 

キャリア自律とは自らの中長期キャリアをイメージし、自発的にキャリア開発を進めていくこと

 

日本企業では組織がジョブローテーションや育成という名目で、配属・転勤を決めることが多く、社員の選択肢は限られていました。いわば自律させない仕組みがあったのです。
しかし、変化の激しい時代にミドル・シニア人材が活躍し、成果を出せるようになるには、“他律”から“自律”への転換は避けては通れない道です。社員自らが考えた理想のキャリアを目指して仕事に取り組めば、自然とモチベーションが上がり、それがパフォーマンスの向上にもつながります。

 

 

 

ミドル・シニア人材のキャリア自律は若手にも影響を与える

ミドル・シニア人材のキャリア自律に取り組むと、本人たちのモチベーション向上だけでなく、若年社員にも影響があると考えられます。例えば、シニア社員が活躍している職場では、若年社員の転職意向が抑制されます。

また、50歳中盤からは大半が自身より年齢が下の上司のもと仕事を進めることになる中、上司のよき理解者・相談役となるよう積極的にフォロワーシップを発揮することができれば、企業全体の推進力にも大きな影響を与えるでしょう。

 

 

 

Q.シニア・ミドルの活躍を支援する方法とは

ミドル・シニア社員を活躍させるには、どのような方法があるのでしょうか。

ここでは5つの施策をご紹介します。

 

  1. キャリアデザインの機会を設ける
  2. 周囲からの期待・役割を伝える
  3. 柔軟な人事異動制度を設ける
  4. リカレント教育を促す
  5. プロボノ活動を勧める

 

 

1)キャリアデザインの機会を設ける

 

ミドル・シニア社員は、年齢や能力の衰えを理由に、可能性を閉ざしている場合もあります。そのため、キャリアデザインの機会を設け、職業人生を設計し直してもらうことも有効でしょう。キャリアデザインとは、WILL(したいこと)・CAN(できること)・MUST(期待されていること)を踏まえて、将来の目標や達成に向けた行動計画を立てることです。これにより、「本当は挑戦したいと思っているのに諦めていること」や「ほかの職種で活かせる意外な強み」が分かることも珍しくありません。企業がキャリアデザインの結果を考慮し、本人に適した人事配置を考えることもできます。また、本人に新たな可能性に気づいてもらい、モチベーションを引き出すことも可能です。

 

 

2)周囲からの期待・役割を伝える

 

ミドル・シニア社員にありがちなのが、昇格や昇進が止まったことを背景に、「自分は組織から必要とされていない」と思い込んでしまうことです。ただ、ミドル・シニア社員は会社の成長を支えてきた立役者であり、豊富なノウハウを蓄積しているケースも珍しくありません。そのため、会社側としては本人に「どんな役割を期待しているのか」「どのくらい高く評価しているのか」を言語化して伝えるべきです。周囲から必要とされていることに気づけば、本人も仕事へのモチベーションを高めることができ、新しい挑戦への原動力も得られるでしょう。

 

「心の自走ペダル」を回してもらう

心の自走ペダルとは、自分から「前に進もう」「新しいことをやってみよう」というポジティブなマインドセットを作ることをいいます。ミドル・シニア社員には、こうした自走ペダルを回せるよう促すことが大切でしょう。自走ペダルを回そうと思うときは、たいてい周囲から期待をされているときです。停滞感を覚えているミドル・シニア人材の多くは、「期待されてもいないのに頑張れないですよ」とよく口にします。だからこそ、企業としては、ミドル・シニア人材に対して「まずは期待をかけてみる」という風土を作っていくことが重要なのです。

 

 

3)柔軟な人事異動制度を設ける

 

ミドル・シニア社員の気力低下を招く原因として、仕事の「やらされ感」が挙げられます。自分の希望していない部署で、与えられた業務に毎日取り組み続けるのではモチベーションも上がりません。そのため、企業側としては社員本人に「選ばせる」仕組みを設けることが重要です。例えば、人材を必要とする部署が募集をかけ、希望者が自ら手を挙げて応募する「社内公募制度」があります。また、自らの経歴や能力を希望部署に売り込む「社内FA制度」も一例です。このように自己申告制の異動制度を設けることで、本人への動機づけが期待できます。

 

 

4)リカレント教育を促す

 

ミドル・シニア社員は今までの豊富な経験がある分、自分の価値観に縛られ、業務で創造力を発揮しにくくなるケースもあります。そのため、リカレント教育によって成長を促すのも有効です。リカレント教育とは、人生のなかで教育と就労を繰り返す教育制度のことで、「学び直し」とも呼ばれています。例えば、ミドル・シニア向けに開講されている大学や大学院のゼミに参加したり、資格取得に向けたスクールに通ったりというのが挙げられます。ミドル・シニア社員に新たな視点を養ってもらうことで、業務でのパフォーマンス向上が期待できます。

 

 

5)プロボノ活動を勧める

 

停滞感を覚えているミドル・シニア社員は、自己有能感を失っている場合もあります。そのため、一度社外に出て、さまざまな社会活動で自信を取り戻してもらうことも有効です。その一例として「プロボノ活動」があります。プロボノ活動とは、職務上の専門スキルを活かして取り組むボランティア活動のことです。例えば、地域福祉を目的としたNPO法人に参加してもらい、プロジェクトでこれまでの経験によって培ったスキルを発揮してもらいます。「自分の経験が社会に役立つ」という実感をミドル・シニア社員に味わってもらうことで、社内での再起にもつながりやすいでしょう。

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