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なぜ、「指示待ち人間」な部下が生まれるのか?【新米人事の備忘録vol.5】
2023.11.21
- 人材育成のタネ
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【目次】
①なぜ、指示待ちの部下へとなってしまうのか?
②なかなか難しい「視座」の問題
③部下が自ら考えて動けるようになるための“前提条件”とは?
①なぜ、指示待ちの部下へとなってしまうのか?
弊社のお客様である人事の方々に「新入社員が1年後、どうなっていて欲しいですか?」と質問すると、業種関係なく同じ回答が返ってきます。それは、「自分で考えて行動ができる社員になって欲しい」という内容です。
これは裏を返せば、多くの人事や上司の立場の方が、部下に対して「もっと自分の頭で考えて行動してくれよ…」と感じている人が多いのではないかと推測できます。
「なぜ、こんな簡単な理屈も分からないのか」
「なぜ、経験から学ばないのか」
「なぜ、積極性を見せないのか」
「なぜ、ここまで視野が狭いのか」
……指示待ちな部下への苛立ちを経験することは、一種のあるある話です。
しかし若者側では、このようなあるある話が有名です。
「上司が、“自分で考えて行動しろ!”と指示を出したから頑張って取り組んだら、今度は“なぜ相談しに来なかった!”と怒られた!
言いたいことの意味が分からない!」
人によっては、不憫な若手だなと思う方もいれば、もっと上司の意図を汲み取って考えなさいよ…と思う方もいるかと思います。
一つはっきりしているのは、このように憤りを感じた若手は、今後その上司に対しては指示待ち人間になるだろうということです。
この問題は、若手の“視野”が狭いからでしょうか?
いえ、それよりも“視座”の問題だと考えられます。
②なかなか難しい「視座」の問題
“視野が広い”とは、本来は「目で見えている範囲が広い」ということを指します。
そしてそこから、「思考や知識の幅が広く、多面的に物事をみることができる」ことを表す言葉としても用いられます。
一方の“視座”とは、「物事を眺め、それを把握するときの立場」のことを呼び、視野のように「狭い↔広い」ではなく、「低い↔高い」で表します。
仕事ができる人の特徴と言われている「視座が高い」とは、「より会社の中でも高い立場の視点から、物事を見ることができる」という状態です。
「言われた指示の通りに、ただそれだけをこなせばよい」
という状態が、視座が低い状態です。
もし視座が高い状態なら、
「指示の背景に誰が関わっているのか」
「この指示をこなすことで、誰の役に立つのか」
「会社全体が注力したいプロジェクトに、どうすればこの作業が貢献できそうか」
といったように、指示の背景や全体像を考えた上で指示に取り組むといったように、高い視点から俯瞰して考えることが出来ます。
上司の立場から伝えたい「自分で考えて行動ができる状態」とは、上記のようなイメージではないでしょうか。
このように、「自分で考えて行動できる」というのは、要するに「視野を広くしろ」ではなく「視座を高くしろ」という意味だと考えられます。
では、部下に対して「もっと視座を高くしろ!」と言えば解決するかと問われれば、確実に失敗するでしょう。
そもそも視座が高くなるのは、外的な要因が大きいです。
①自分自身の責任が増え、
②その責任に見合った待遇も与えられ、
③権限や影響力が増え、
④組織での経験が蓄積され、
⑤組織の全体像を把握できるだけの知識を得る。
これらの条件がかみ合って、初めてより高い視座で物事を捉え、考えられます。いわば、高い視座に至るための階段なのです。
この階段を無視して、視座が低い者に対して何も与えることなく「もっと視座を高めろ」と言ったところで、視座が低い者にとっては「高めたいとしても、どうやって高めればいいのか分からない」という状態になります。
客観的に見ればこの状態は、上の立場の者のワガママです。まして、ここで根性論を述べれば、いよいよ部下からの人望まで失います。
部下の視座を高めたいのであれば、階段の上から手を差し伸べ、引っ張り上げるのが最適解かつ、上司の役割なのです。
しかし、どうすれば引っ張り上げることができるのでしょうか?
③部下が自ら考えて動けるようになるための“前提条件”とは?
花を育てるには、まず土壌を整えるように、部下が自ら考えて動くためにも、土壌づくりが必要です。
そもそも指示待ち部下は、視座が低くなっていることが問題です。その原因には「3つの分からない」が存在しています。
よって、この「3つの分からない」を解消することができれば、上司の指導力やカリスマ性などとは関係なく、自然に部下が行動しやすい条件が整っていきます。
「3つの分からない」とは、以下の通りです。
1:今、自分に何を求められているか分からない(現状・役割の不明確)
2:自分が目指すべきゴールが何か分からない(目的・目標の不明確)
3:どうやってゴールに進めばよいか分からない(過程・道筋の不明確)
この3つを明確にするのは、そもそもは人事の役割であり、責任です。
参考:『改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』山本浩二 著,あさ出版,2020年,PP100-111.
「若手の柔軟な視点で、ボトムアップでイノベーションを!」とうたう場合でも、真に機能している会社では、例えば次のような3ステップで動いています。
1:若手たちに「君たちの柔軟で会社に染まっていない客観的な視点で、会社の現状を見直してほしい」と役割と責任を与え、
2:最終的に達成してもらいたい課題や問題解決、会社の状態を説明することで、ゴールのビジョンを共有し、
3:業務の中で確認や報告などができるルールと、若手の周囲の人間にも周知させてサポートできる環境を築く。
このように、上司側の事前準備があるからこそ、若手も効果的に動くことができて、その中で経験と知識、責任感を培うことで自然に視座が高まるという好循環を生み出すことが出来るようになります。
逆に、何も与えずに「自分で考えろ!」という形でスタートすれば、若手の頭の中だけで次の3ステップが生まれます。
1:一旦、まずはやれと言われている業務をやればいいのだろうか…
2:最終的にどうなれば良いかよくわからないから、予想で考えてみるか…
3:とりあえず、手探りでやってみようか…
このような形で、若手が見当違いの方向に努力し、その結果「相談しろよ!」と上司に心をくじかれた結果、「この上司に従ってもロクなことにならない」と判断して、指示待ち人間になるという帰結に陥ります。
皆さまの会社では、この「3つの分からない」は大丈夫でしょうか?
難しいのは、上司がこの「3つの分からない(現状・ゴール・道筋)」を明確にすることがスタートラインであることです。
人間は結局のところ、行動を繰り返していく過程の中で成長し、徐々に当事者意識や視座が育まれていきます。
これを上司と部下との間だけですべて達成することは、もちろん大きな価値がありますが、目の前の業務で手一杯になって自然消滅するのが、正直な所よく耳にする話です。
そこで弊社では、この「3つの分からない」の問題について、ヒアリングを重ねて明確化の手助けをして、そこから部下が実際にゴールに基づいて行動と振り返りのサイクルを実践できるように支援するプログラム「SSP(自律自転の習慣化プログラム)」をご準備しております。
もし「3つの分からないを何とかしたい」「部下が自分で考えて行動できるように育って欲しい」といったお困りがございましたら、お気軽にご相談ください。
部下が自律自転できるためのキッカケと環境圧を提供するプログラム「SSP」はコチラ